卒論の構成

卒業論文のスタンダードな構成は以下の通りです。

表紙

以下の項目をセンタリングで書く。

  • 200x年度卒業論文(14pt)
  • タイトル(24pt)
  • (縦方向に間を開けて)
  • 学生番号(14pt)
  • 名前(14pt)
  • (指導教員)誰々(14pt)
  • 早稲田大学人間科学部

もくじ

章レベル(1. 問題、2. 方法 など)だけで良い。節レベル(1.1 背景、1.2 研究史 など)まで含めても良い。

本文の後の付録にもページをふり、もくじに入れる。

なお、ページ番号は、本文からふる。それまでは、表紙の次のページから、i, ii, iii, iv, v, vi…などのようにふる。

1. 序論

1.1 背景

読者はまだあなたの研究についての予備知識を持っていないわけですから、自分の研究について述べる前に、まず自分の研究に関連したことで、現実社会において問題になっていることから話を始めます。

背景で述べた一般的な問題を受けて、この問題に対処するためにはどのような研究が必要か、またどのような理論的な枠組みが必要かについて述べます。

1.2 研究史

背景と研究の必要性を受けて、この領域ではどのような研究が行われてきたか、またどのような理論が提案されてきたかについて説明します。

引用の仕方

先行研究をまとめるときはなるべく自分の言葉で言い換えるのがいいでしょう。文献は「著者名+年号」によって特定し、文献データは巻末の「引用文献」のところでリストにします。引用するときには、具体的には次のような2種類の書き方があります。

(1) 地の文で引用する場合

(例) 向後(1996)は、大学の授業中の課題や試験でコンピュータを用いる場合は、学生が1分あたり250文字以上のタイプ速度を持っていることが公平な評価のために必要であることを示した。

(2) 文の終わりや途中でカッコ書きで引用する場合

(例) 大学の授業中の課題や試験でコンピュータを用いる場合は、学生が1分あたり250文字以上のタイプ速度を持っていることが公平な評価のために必要であることが示されている(向後、1996)。

1.3 問題提起

研究史を受けて、これまでの研究ではどこまでが明らかになり、どこがまだ明らかになっていないかということを述べます。さらに明らかになっていないどの点をこの研究で明らかにしようとするのかを述べて問題提起とします。

2. 方法

2.1 目的

この実験は何を明らかにするものであるかを目的として簡潔に書きます。

2.2 実験協力者

実験協力者の職業、性別、人数、年齢などの情報を全体の統計値として記述します。また謝礼を渡したかどうかなども書きます。次の「日時と場所」の項目もそうですが、文章の形で書きます。

注意

最近の研究者倫理規定では、プライバシー侵害の怖れが少しでもあるような書き方を避けるように規定しています。例えば、実験協力者の所属学校の名前はもちろん、「○○市のS小学校」のような書き方も避けるべきです。また個別の事例を出す場合は、実験協力者のイニシャルは避け、「S1, S2, S3」のように記述します。

2.3 日時と場所

この実験がおこなわれた日時と場所について文章の形で書きます。

2.4 材料

この実験で使われた材料はどこから採用したか、あるいはどのようにして作成したかについて書きます。その内容についてはここに記述しますが、実際の材料はここではなく、巻末の「付録」のところに収録します。

2.5 装置

この実験で使われた装置について、メーカーや型番、接続方法などについて書きます。必要があれば装置の写真を(デジタルカメラで)撮り、図にしておくといいでしょう。

2.6 手続き

実際の実験はどのようにおこなわれたのかということを、第三者が読んで再現できるように書きます。実験協力者に与えた教示内容も書きます。また、質問紙や解答用紙の内容についても書きます(実際に使われた質問紙は「付録」に収録しておくといいでしょう)。

実験や調査などを2つ以上した場合

実験や調査、製作などを合わせて2つ以上おこなった場合には、章立てが少し変わります。具体的には次の例を参考にして下さい。

(1) 実験を2つおこなった場合

  • 2. 実験1
    • 2.1 実験1の方法
    • 2.2 実験1の結果
    • 2.3 実験1の考察
  • 3. 実験2
    • 3.1 実験2の方法
    • 3.2 実験2の結果
    • 3.3 実験2の考察
  • 4. 総合考察(実験1と実験2をまとめて考察する)

(2) 調査と実験をひとつずつおこなった場合

  • 2. 調査
    • 2.1 調査の方法
    • 2.2 調査の結果
    • 2.3 調査の考察
  • 3. 実験
    • 3.1 実験の方法
    • 3.2 実験の結果
    • 3.3 実験の考察
  • 4. 総合考察(調査と実験をまとめて考察する)

3. 結果

3.1 結果の章の見出し

結果の章と考察の章では、方法の章におけるようなある程度決まった項目立てがありませんので、得られたデータとその処理をひとまとまりごとにして項目を立てるのがいいでしょう。

表の書き方

得られた結果をコンパクトに記述するために表を使います。表には、「表x.y」というように番号をつけます。ここで、xは章の番号、yはその章の中の何番目の表であるかの番号です。たとえば、3章の1番目の表は「表3.1」となります。その章の中で表がひとつしかなくても「.1」をつけます。

番号のあとには、表のタイトルと(必要なら)説明をつけます。タイトルは必ずつけます。

表の番号とタイトルは表本体の上にセンタリングで置くことになっています。

図の書き方

図も表と同様、「図3.1 ○○○」というように、番号とタイトルをいれます。図の番号は表の番号とは独立につけます。図の場合は、番号とタイトルは図本体の下に置きます。

表と図と本文との関係

結果を表か図で示すときは、どちらかのひとつの方法を選びます。同じデータを表と図の両方で示してはいけません(これは論文は簡潔であるべきという原則に基づいています)。細かいデータを記録しておきたい場合は、巻末の「付録」で収録するようにします。

結果を図表で示しても、本文でその内容に触れるようにします。「この結果は図3.1に示した」という一言で本文を終わりにしてはいけません。本文では、どのような集計方法を取ったか、どのような統計手法で分析したか、有意差はどうか、などの記述を含めて、結果について書きます。

このときに結果を「客観的に」書くことが大切です。つまり、結果の「解釈や意味づけ」については次の「考察」の章でおこないますので、ここでは、結果の解釈をしてはいけません。あくまでも、どんな結果が出て、どういう統計処理をしたら、どうなったか、ということを「解釈抜き」で述べるわけです。したがって、「・・・と考えられる」や「・・・と思われる」という文章はここでは使いません。

4. 考察

考察では何を書くか

考察の章では、得られた結果を踏まえて、まずその結果が仮説を支持するものであったかそうでなかったかを述べます。その次に、仮説が支持されたにせよ支持されないにせよ、なぜそのようなことになったのかということを論理的に推論して、その推論の内容を順序よく書きます。

また、最初に立てた目的や仮説で直接触れなかったことでも、もし注目すべき結果が得られたならば、そのことに触れ、考察を書きます。当初考えられたデータ分析の方法とは違ったやり方が考えられるならば、それを二次的な分析としておこない、この考察の章で述べることもできます。

考察の章の項目立て

結果の章と同様、決まった項目立てはありませんので、ひとまとまりの考察ごとに項目を立てるのがいいでしょう。最後には、考察で述べたことの全体をまとめて総合的な考察として書くことも必要です。

5. 結論

結論の書き方

結論は1ページあるいは2ページで、研究の全体と明らかになったことがらを簡潔にまとめます。項目立てはしません。まず、問題と仮説を簡潔に述べたあと、方法と結果を書きます。ここでは図表は使いませんので、文章で述べます。最後に考察を簡潔に述べてまとめます。

引用文献

引用文献リストは、著者のアルファベット順(日本人の場合は姓・名をローマ字綴りにして考えます)で並べます。同一著者の場合は、発表年が早い順に並べます。さらに発表年が同一の場合は、1996a, 1996b, 1996cというようにアルファベットの小文字をつけます。同一の著者が単独のものと、第一著者として共著のものを発表している場合は、単独のものを先に並べます。

項目ごとのレイアウトは1行目を左いっぱいから始め、2行目以降を2文字分程度字下げします。

論文の場合

「著者 発表年 論文題名 掲載雑誌名, 巻, ページ.」の順番で書きます。雑誌名と巻には下線を引き、さらに雑誌名は斜体(イタリック)に、巻は太字(ボールド)にします。日本語の著者が2人以上の時は「・」で区切ります。アルファベットの著者は姓を始めに書き、コンマに続いてイニシャルを書きます。2人以上の時はコンマで区切り、最後の著者の前を「, &」(コンマとアンド)で区切ります(ただし本文中で引用する場合は、「Kogo & Koshikawa」のようにコンマはいらない)。

単著の例

向後千春 1990 操作することはマニュアル文の読みを速める 教育心理学研究, 38, 330-335.

共著の例

向後千春・野嶋栄一郎 1990 オペレーティングシステムの理解と操作スキル獲得のための教育環境 CAI学会誌, 7, 14-21.

英文の例

Kogo, C., & Koshikawa, F. 1991 Paradoxical fall in Hebb digits task: Mode change in the search process. Japanese Psychological Research, 33, 97-101.

書籍の場合

「著者 出版年 書名 出版社」の順番で書きます。編集者がひとりの場合は(Ed.)、二人以上の場合は(Eds.)を使います。外国の出版社の場合は、「出版地: 出版社」の形式で書きます。本の中の1章を示す場合は、最後にページ数をいれます。

日本の書籍の例

行場次郎・向後千春・高橋伸子・横澤一彦 1995 認知心理学重要研究集1—視覚認知 誠信書房

外国の書籍の例

Wilson, B. G. (Ed.) 1996 Constructivist learning environments. Englewood Cliffs, N.J.: Educational Technology Publications.

本の中の1章を示す例

向後千春 1996 メディアのデザイン—メディアを学ぶ、メディアで学ぶ 川浦康至他 メディアサイコロジー 富士通ブックス Pp.127-155.

翻訳書の場合

書籍の場合に準じますが、そのあとにカッコ書きで原著の情報を書きます。

翻訳書の例

ガニエ, E. D. 赤堀侃司・岸 学(監訳) 1989 学習指導と認知心理学 パーソナルメディア (Gagne, E. D. 1985 The cognitive psychology of school learning. Glenview, Illinois: Scott, Foresman.)

Webページの場合

Webページを引用する場合は、ページを提供している主体(著者)とページのタイトルを記し、自分がそのページを参照した日付を記載します。これは、将来そのページがなくなる可能性も想定し、少なくともその日付には存在したということを示すことになります。そのページが提供され始めた日付がわかれば、記載しますが、多くの場合は書かれていないことが多いです。

Webページの例

向後千春、アイスクリーム屋さんで学ぶ楽しい統計学、http://kogolab.jp/elearn/icecream/index.html、2007年1月15日

あとがき

あとがきには卒業論文を書いてみて感じることを記しておきます。また、協力してくれた被験者、アドバイスをくれた先輩や友人、また指導教官への謝辞もここに書いておきます。最後に、書き上げた日付と場所、自分の名前などをいれておくといいでしょう。

資料

資料には、次のようなものを収録しておきます。

  • 実際に使用した、調査用紙、テスト用紙、提示した刺激図版など
  • データ処理をおこなう前の元データの一覧(特にインタビューをテープ起こししたもの)

いずれも後輩が再分析したり、追試実験をするときに必要になるものですのでここにまとめておきます。なお、収録には、個人名を削除して、連番を振るなどの処理をしてください。

資料のページ番号は、本編から継続してつけることとします。